米沢食肉公社社長・佐藤康寛さん(66・S50卒)

佐藤康寛氏(さとう・やすひろ)

宇都宮大学農学部卒。1980(昭和55)年、置賜畜産公社(現、米沢食肉公社)入社。取締役、常務を経て2020年から現職。白鷹町出身。

米沢食肉公社

1964(昭和39)年、置賜畜産公社として設立。米沢牛の銘柄確立が進み、2006年、現社名に変更した。と畜解体、米沢牛枝肉市場の運営、牛、豚部分肉や食肉加工品の製造販売など食肉全般を手がける。資本金1億円。従業員数は102人。本社所在地は米沢市万世町片子5379の15。

-新型コロナウイルス禍を経て、自社の現状は。

「需要はだいぶ回復しており、昨年度の当社の取扱高は、前年度比112%の73億円ほどと過去最高となった。2020年春に一時、65%まで下落した米沢牛枝肉価格に関しても、高値で推移している。価格が上がっている理由としては、お取り寄せ需要の増加や各種キャンペーンの効果、今年12月から米沢牛の定義を現行の生後月齢32カ月以上から、33カ月以上とするなどおいしさを追求している点が浸透してきていることなどが挙げられるのではないか。土産品を主としていた加工部門は特に大きな打撃を受けたが、販路開拓により高級スーパー、新幹線のグランクラスなどで取り扱いが始まり、コロナ前までの水準まで持ち直している」

-現在の課題と力を入れる取り組みは。

「飼料高騰の中、きちんと生産を続けていけるよう市場会社としては高値を維持することが重要だ。銘柄推進協議会と連携し、米沢牛のおいしさをより一層PRしていく必要がある。天元豚など銘柄豚も評価が高い。食肉加工場で加工品まで手がけているという強みを今後も生かしていく」

-求める人材は。人材育成で工夫していることはあるか。

「真面目にきちんと仕事に取り組める人が一番。加えて自ら考え、行動できる人であってほしい。人材育成では管理職、係長、主任、新入社員を対象とした研修を年間通して定期的に実施しており、テーマを決めてリポートを書き、発表してもらうなどしている。資格取得や外部研修会への参加も奨励し、社員には『自分への投資』を促している。投資は読書でも旅行でも、地域の活動でも良い。幅広くいろいろな経験を積んだり、人との付き合いを広げることで、最終的に仕事にも生きると考える」

-仕事上、最も影響を受けた人物は。

「父の昭寿(しょうじゅ)だ。社会人になる直前の時期に、大学の友人を自宅に招き、一緒に酒を飲んだことがある。その時、父が言った『広い視野で物事を見なさい』という言葉を胸に仕事に取り組んできた。また、現在は経営者となっているような他社の人たちと一緒に仕事をする機会があり、人との付き合いを含めて仕事の仕方を学ばせてもらった」

私と新聞 他社の取り組み刺激に

佐藤康寛社長は毎朝、新聞の1面を読んだ後、各面の見出しに目を通して地域や社会で何が起きているかを把握する。本紙で特に関心を持って読んでいるのは、地域の話題や他の企業の取り組みだ。「他の会社の地域貢献に関する話題などを読むと、当社も少しでも地域に貢献ができたらと、刺激になる」という。

以前、本紙のNIB出前講座を前に、社員に新聞記事に関するリポートを書かせたことがある。「同じ新聞を読んでいても、各自注目する記事が全く異なっていた。社員が多様な見方、考え方を持っているのだなと感じ、面白かった」と振り返る。その時に佐藤社長自身が選んだのは、他の経営者の考え方を知ることができる「フロントライン」だった。

2023年5月12日山形新聞より